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つよがりが聞いて呆れる(かみたざ)


D課かみたざ、D組かみたざ前提、D組神永×D課田崎 ドラマCDクロスオーバー



「おいで、神永」
 ひどく妖しい顔をして、田崎が手を伸ばしてきた。田崎といっても、同じ中学二年生の田崎ではなく、大人の男のほうだ。
 警察官でD課という課にいるらしいやつは、おれのよく知る田崎と似ているようで、全然違った。
「あいつ、どこに行ったんだよ」
 すぐに言うとおりにするのが悔しくて、作った拳を背中に隠し悔し紛れに聞いてみる。
「俺の神永のほうに行ってるよ」
 過去に経験したことだからわかる。と、当然のように答えられてしまった。俺の神永、なんて、あいつはそんなことを一度も言ってくれたことがないのに、未来のおれは当たり前に聞いているのか。
「大丈夫、何もしないよ。お前をどうにかしたら、俺も俺の神永にすぐにばれてしまうからな」
 何せ同一人物なんだから。と笑うのが、いつか訪れる未来の田崎。
 本当に、本当に悔しいほど色っぽくて、歯を食いしばる。だって、この田崎はおれの知らないおれを知っていて、当然のようにそれを受け入れているのだから。
 この先おれがどうなるのかも、多分彼は知っているのだろう。
「おれ、早く元の場所に還りたい」
 拗ねたみたいな声が出てしまって、しまったと顔を歪める。これじゃあまるっきりただの子供だ。こいつにそんな姿、見られたくないのに。
 目の前の田崎もそれには驚いたのか一瞬目を見開くが、すぐに笑い出した。
「なにが可笑しいんだよ!」
「ああ、いや、ごめん。馬鹿にしたわけじゃないんだけど、お前ってこんなに可愛かったんだな」
 馬鹿にしてるだろ。絶対。
 もう何も言うまいと口を閉じると、涙が出るほど笑った田崎が、軽くごめんと繰り返して此方に寄ってきた。
 後ろに下がろうとしたけれど、田崎と同じ目をしているはずのまっすぐな瞳に射抜かれて、何もできなくなる。
「ほら、ごめんて言ってるだろ。機嫌、直せよ」
 今度はぽんぽんと頭を撫でられてしまう。本当にこいつは、大人なんだ。背丈も違えば顔つきも違う。だけど何処かでおれの田崎なんだって、思いたかったけれど。いや、今だってそう思いたいけれど。
 十四年という、自分では大人になってきたと思っていた時間は、本当の大人を目にしたら全然歯が立たない。
「大丈夫だよ。あと何年かしたらお前は、俺の神永になるんだから」
 離れてしまわない限り。と、付け足して、笑った男は腕時計を眺めて、そろそろかな、と呟く。
「だから離すんじゃないぞ」
「離すわけないだろ」
 だって田崎は、おれのものなんだから。
 ようやく言い返してやると、嬉しそうに笑って手を振られる。自分の身体を見れば発光していて、ああもうすぐおれの田崎のところへ還れるんだとわかった。
「また、な」

 真っ白な光に包まれ、気が付くと目の前にはおれのよく知る田崎がいて、顔を覗き込んできていた。
「大丈夫か、神永」
 ベッドに眠っていたらしいけれど、あれは夢ではないという確信がある。
「田崎」
 手を伸ばして田崎を抱き締める。おれと同じ身長で、体格も然程変わらない、正真正銘おれの田崎だ。
「浮気、してないだろうな」
「するわけないだろ」
 胡乱げな声をかけられて、思わず笑ってしまう。まだまだ、大人の田崎には程遠い。大丈夫だ。
 『またな』の約束を守れる日は必ず来る。それまで離したりはしないから、これから一緒に成長していこう。
 それがおれの出来る、最短の道だ。

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