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五代属性の『空』。他の四代属性のいいとこどりをしたのがこの属性らしく、幼い頃は割となんでも出来てしまうフラットを両親は誇らしく思っていたようだ。天才ともてはやされ、あらゆる魔術を吸収していく姿に、驚きや好意を感じていた。
それも幼い頃に限った話だが。
成長し、魔術を詳しく習うようになってから、様々なことを試した。勿論両親が成してきた魔術の解析もしたし、効率が悪い部分は指摘もする。魔術の研鑽を積み根源を目指すのが魔術師としての本質ならば、他者からの真っ当な指摘は受け入れるのは当然だし、感謝されこそすれ居直られるのは不思議で仕方がなかった。
手慰みに渡された研究を完成させてみたりもしたのは事実だ。ただしそれを、レポートに纏めろと言われたらお手上げだ。何となく弄ってたまたま完成させただけなのだから、工程のひとつひとつの言語化なんて効率が悪いにも程がある。
そういえば何年か前に二世の発言をツイッターに自動で投稿する魔術を作ったから、自分の思考や行動を自動でレポートに纏める魔術でも作れるだろうか。と、考えたが、あれは元々発言された言語をそのまま投稿する魔術であって、言語化されていないものを自動的に言語化する魔術ではない。ちょっと骨が折れそうだし、今のままでも親愛なる絶対領域マジシャン先生は十分汲み取ってくれるから必要ない。どうしても必要な時が来たら作ればいいだろう。
それに何より、教授との交流を自ら減らしてしまうのは非常に勿体ない。
フラットのことを馬鹿やアホで済ましてくれる人物なんて、ロード・エルメロイ二世その人と、エルメロイ教室の生徒やOB、OGくらいなのだから。
だから正直な話、時計塔の現代魔術科はこれ以上なく心地いい。
先生はフラットを一人の魔術師として接してくれる。決して殺意を向けることなく、同時に馬鹿やアホと罵ってくれるのは、フラットにとってとんでもない収穫であった。生まれてからそれまで馬鹿と言ってくれる魔術師など一人としていなかったし、殺されかけはすれど、対等に接してくれる魔術師すらいなかったのだから。
だから大いに尊敬の意を込めて、彼に似合う格好いい二つ名を付ける。
「おはようございます! グレートビックベン☆ロンドンスター先生!」
「私を変なあだ名で呼ぶなと何度言ったらわかるんだお前は!」
彼が気に入るに足る二つ名を考えるのが、フラットにとって当面の目標である。
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