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身体を重ねたあと泥のように眠っているウェイバーの息が、睡眠がわずかに浅くなったのを示して乱れた。また深い眠りに落ちて朝まで目覚めないのが常で、だからメルヴィンは油断していたのだろう。浅い眠りに入ったことは、同時に目覚めにも近いと失念していた。
「あいしてる」
決して伝えてはならない言葉。気付かれてはならない想いは、墓までもっていく。だから、寝言のように「なに」と返ってきた事実に心臓は跳ねたし、「なんでもない」と答えた声は平静を保てていたかどうかわからない。
少し、疲れているのかもしれない。こんな言葉を吐いてしまうなんて。
ベッドを降りようと起き上がり、揺らさないよう、起こしてしまわぬよう細心の注意を払って向きを変えたら、腕を掴まれた。
「逃げるな」
もうその深緑の瞳は夢を映していない。意識は此方側に戻っていて、メルヴィンは泣いてしまいそうで、笑ってしまった。
「私が冗談で言ったとは思わないのかい?」
「ホワイダニット。寝ている私にそれを言う理由はひとつしか見つからない」
真っ直ぐな眼差しは、今もメルヴィンをとらえて離さない。伝えてしまえば、親友として傍にもいられなくなる。金の無心にも来なくなるかもしれないし、無論身体を重ねることも、彼の性格からして良しとしないだろう。
殆どの場合メルヴィンから会いに行っていたが、避けられるようになる可能性すらある。少なくとも、直接会う機会は、圧倒的に減る。
それなのに、どうして。
覚悟を決めなければならないのだろう。
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