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墓守と人間とどっちつかず

 名前も与えていない、情もわかないはずの動物の死を悼む師匠はあの時、何と言っていただろう。
 もう正確には思い出せない。
 ただ、否定もされなければ、肯定もされなかったことだけは憶えている。

 たとえば今、師匠が『土の中で眠る』ひとになったとしたら、拙はきっと同じことを思えない。師匠が与えてくれた数々が、そうさせてくれない。もう二度と土の上で歩かないことに嘆き、もしかしたらもう一度目覚めて欲しいと願うかもしれない。そして、『土の中で眠る』ひとになって欲しくないと思っている。命を懸けて、守りたいと切望している。彼には、生きていて欲しいと感じていた。そして、幸せでいて欲しいと願っていた。
 きっともう、拙はただの墓守には戻れない。師匠を脅かす墓の上を歩く者には容赦しないけれど、あの、とても人間らしい魔術師が冷たくなってしまうことを考えたら、震えてしまう。眠ったはずなのに墓の上を歩いていたら、喜んでしまうだろう。一も二もなく駆け寄って、少し寂しげな笑みで、いつものように呼んでほしくなってしまう。
だから、どうか、と願ってしまう。
 師匠の願いが叶うことを、どうしようもなく願ってしまう。墓守であることしか意味を持たなかった拙が持った、人間としての初めての願いは、彼の願いが叶うこと。ただそれだけ。

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